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見えないだけで月だってきっと燃えてるんだって
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中学生の時分、志賀直哉の『范の犯罪』をどうしてかとみに気に入っていた

愛とか責任とかそういう重いテーマではなく、"偶発的に"人を殺してしまう、という題材そのものが厨二心をくすぐったのだ

范が妻を憎むに足る理由は作品内で掲示しているが、さて范が憎むべき相手が他人ではなく自分であったら彼はどうしたか

罪を償わねばと思うものの切り出せず、罪悪感ばかりが身を苛む時に彼が綱渡りの台に立った時に何を思うか

まず一歩目、踏み出した足が外れかけよろめいた彼は生への執着を感じるだろう

だが二歩目、三歩目と歩を進めるうちに彼には綱が見えなくなっていく

文字通り空に浮きながら范は自分の罪と対峙し、のうのうと生き延びる自分が許せなくなる

殺す術は簡単だ、少し足を滑らせてしまえばいい、そうすれば"不幸な事故"で終わる

………………

……結論から言えば、彼は自分を殺すことなんてできなかった

生きたいから、ではなく、殺す勇気がなくて、足を空に踏み出すことなどできなかった

しかし、これはナイフを投げるのをやめればそこまでで終わる曲芸ではない

生き延びるためには向こう側の台までたどり着く必要がある

引き返そうにももう真ん中まで歩いてきてしまっている

そして厄介なことに綱渡りというのは一度でも止まると途端に体が揺れ出すものだ

現実に戻った范の前には長い長い綱が彼をあざ笑うように待っている


小説風に今の心境を
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